黄道十二宮
現代の日本では、星占いの好きな人がたくさんいるようです。
テレビで毎朝、「今日運勢がいいのは、おひつじ座の人」などと言っています。
このような種類の星占いはメソポタミアで始まったもので、“おひつじ座”、
“おうし座”、“ふたご座”、“かに座”・・・などの12個の“星座”を
しかし、黄道十二宮は、普通に言う星座ではありません。
ある人が生まれたときの太陽(や月や惑星)の位置を示すために、特別に
つくられたものなのです。
太陽は星空の中を1年で1周しますが、その通り道が“黄道”です。
太陽はまっすぐに進みますので、その道筋は直線、ではなくて、
円になります。(元に戻ってきますからね。)
黄道十二宮は、その円を正確に12等分したものです。
(実は、黄道円そのものでなくて幅があってもいいのですが。いずれにせよ、
12等分というところがポイントです。)
各宮の名前は、もともとそのあたりにあった星座の名前がつけられて
いますからややこしいのですが、星座とは別のものなのです。
(だから、“おひつじ座”ではなくて“おひつじ宮”のように言ったほうが、
誤解を避けるという点でよいと思います。「白羊宮」というような用語を
使うべきだと主張する人もいます。)
円の1周は360度ですから、1つの宮はどれも30度になります。
そこで、「今日の太陽はおひつじ座12度にある」などと
太陽の位置を表すと、とてもわかりやすい、すっきりした
表し方になります。
月や惑星は、黄道の付近を動きますが、太陽のように一定の道筋を
通ることはありません。多少北や南にもずれます。
そこで、黄道を中心線として、月や惑星が通る範囲をふくむ帯を
想像することができます。これが“黄道帯”です。
(この黄道帯を12等分したもの、というのが、黄道十二宮の一番適切なイメージです。)
月や惑星の位置は、この黄道帯の中で、黄道の方向にどれだけ行ったか、
黄道から北や南にどれだけずれているか、ということで表すことができます。
「今日の火星はおうし座26度、北1度にある」などと言うわけです。
これをさらに空の全部に拡張すると、どんな星の位置も、黄道方向と
南北方向の2つの度数で表すことができます。
これが“黄道座標”と呼ばれるもので、古代の天文学の発達に
決定的に重要な役割を果たしました。
「これがあったからこそ、天文学は大きく発展できたのだ」とも言える
くらいのものです。
実際、メソポタミア・ギリシャ・アラビア・ヨーロッパの天文学は、
黄道十二宮をこのように使った黄道座標によって成り立ってきました。
現代の天文学では“赤道座標”のほうがよく出てきますが、
近代以前で天文関係の座標といえば、黄道座標だったのです。
黄道十二宮と似たものに“二十八宿”があります。
月の通り道に沿って設定された28個の星座です。
“月宿”とか“星宿”とか呼ばれることもあります。
月宿は主に中国、インド、アラビアで知られています。
こちらは、黄道十二宮と違って、月の通り道を28等分したものでは
ありません。(そもそも月の通り道は1つの円にはなりません。)
座標としての機能は黄道十二宮ほど徹底したものではありませんでしたが、
中国では星の位置をあらわすのにこの二十八宿を使いました。